No.10 TMGあさか医療センター 島﨑士先生 

“どんな症例でも断らない”をモットーに
大学病院レベルの高度な歯科口腔外科治療を提供

TMGあさか医療センター
副院長
歯科口腔外科 部長
島﨑 士 先生

しまさき・あきら
2004年、日本大学歯学部卒業。同年、東京女子医科大学医学部歯科口腔外科学教室 入局、同医学部医学科 歯科臨床研修。2005年、同大学医学部医学科 医療練士研修生。2010年、筑波大学医療系顎口腔外科学 国内留学。2011年、東京女子医科大学医学部歯科口腔外科学講座 医局長・助教。2017年、朝霞台中央総合病院(現・TMGあさか医療センター)入職。2018年1月、TMGあさか医療センターに歯科口腔外科を開設。2018年4月、同院歯科口腔外科部長に就任。2023年6月、同院副院長に就任。現在に至る。

【認定資格】
博士(医学)
日本口腔外科学会専門医・指導医
日本口腔科学会認定医・指導医
日本有病者歯科医療学会専門医・指導医
日本口腔インプラント学会専門医
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
日本口腔ケア学会認定資格 2級
ICD(インフェクションコントロールドクター)
歯科医師臨床研修指導医
東京女子医科大学医学部歯科口腔外科学講座講師

 朝霞台中央総合病院が「TMGあさか医療センター」に名称変更、新築移転した2018年に新設された「歯科口腔外科」。一般的に病院歯科は経営が難しいとされているなか、同院の歯科口腔外科は開設以降、地域のニーズを的確に捉えた取り組みで黒字経営を続けています。黒字化の秘訣とは何か?チームを牽引する歯科口腔外科部長で同院副院長の島﨑士先生に話を伺いました。

“オールマイティ”であることが当科の強み

―――歯科口腔外科とはどのような診療科ですか?

島﨑
 歯科口腔外科とは一般歯科医院では対応できない抜歯、外傷や良性腫瘍や悪性腫瘍、嚢胞(のうほう)などの疾患に対応する診療科です。当院の取り扱い疾患は多岐に渡り、先述の通り、口腔がんなどの悪性腫瘍、線維腫などの良性腫瘍、嚢胞性疾患、顎顔面外傷の他、「口腔内科」領域でもある炎症性疾患、口腔粘膜疾患、口腔心身症(舌痛症等)、顎関節疾患、味覚障害や摂食嚥下障害も取り扱っています。もちろん、病院歯科の役割である入院患者さまの虫歯や義歯などの一般歯科治療にも対応しています。

―――歯科口腔外科を標榜する総合病院は少ないですよね。なぜでしょうか?

島﨑
 当グループでも歯科口腔外科を設置しているのは当院と戸塚共立第2病院の2病院のみです。そもそも歯科口腔外科専門の歯科医師が少ないことと、一般的に病院歯科を設置すると赤字経営に陥るといった実態から、設置に踏み出せない病院が多いのは事実です。しかし、当科は2018年の開設から順調に手術・治療・診療実績を伸ばし、経営を黒字化させています。現在、当科には常勤歯科医師5名と臨床研修医1名が在籍しており、毎日フル稼働で業務にあたっています。

―――貴院の強みを教えてください。

島﨑
 “どんな症例でも断らない”が私の信念です。診療科自体が本来少ないため、当院が断ってしまうと困るのは患者さまです。ですから、基本は断りません。たとえ当院で診るのが難しい場合であっても、無下に断らずに他病院に紹介するなど対応しています。
 また、“オールマイティ”であることが当科の強みです。当院は県内でも数少ない日本口腔外科学会認定研修施設であり、日本有病者歯科医療学会の認定施設でもあります。ほとんどの口腔外科疾患を扱うとともに、全身疾患のある患者さまの治療も安心して治療を行うことができるなど、大学病院と同等レベルの治療を提供できるよう尽力しています。これは当科だけではなく、麻酔科などと共同で体制を整えています。また、当院では埼玉県内でもほとんどない歯科口腔外科の24時間救急対応を行っています。さらに、当科の特徴は、入院患者さまの摂食嚥下機能や栄養管理を担うため、口腔ケアチームを結成しているだけでなく、摂食嚥下チーム(SST)、栄養サポートチーム(NST)にも参加。歯科医師や歯科衛生士を含め、医師や看護師、管理栄養士、リハビリテーション科や薬剤師といった多職種が集結した“チーム医療”で患者さまをサポートしています。

地域のニーズに徹底的に応える

―――治療実績を教えてください。

島﨑
 2023年度の治療実績は、初診患者数が6763名、入院患者数が485名、手術件数が340件です。円グラフは外来患者の疾患内訳ですが、「歯の疾患」(う蝕や歯周病などの疾患。抜歯症例を多く含む)1325例と「埋伏歯」(埋伏智歯や過剰埋伏歯など。外科的処置が必要)1919例が半数を占めます。2024年度も抜歯の施術が当科の大多数を占めています。その多くが一般歯科医院からの紹介で来られる患者さまです。
※2023年度の初診患者6763名の内、院外紹介は3909名。

―――紹介患者さまがこれまで増えた要因は?

島﨑
 地域のニーズに応えていったことが要因に挙げられます。1つは患者さまのニーズです。何度も病院に通わなくて済む「即日抜歯」を提案するなど、患者さまが求める医療を常に追求しています。もう1つが地域の歯科医院からのニーズです。一般的に親知らずの抜歯は歯科医院ではリスクが高く、懸念されます。一方、当科は抜歯をはじめ顎関節症や口腔がんなど外科的な治療を専門に行っていますので、設備も充実しており、高度な技術で複雑な症例でも安全に抜歯を行うことができます。ですから、歯科医院の先生方から安心して紹介していただけるのです。もちろん、当院地域連携室の働きがあってこそですが、私も歯科医師会に頻繁に顔を出したり、学術会議で発表したりするなど、広報活動にも力を入れています。

―――島﨑先生が治療する際に心がけていることは?

島﨑
 患者さまの立場に立って物事を考えることです。歯科治療に関して、医療者側が優位に話を進めてしまう、あるいは強要してしまうケースが少なくありません。しかし、これでは患者さまの満足度は得られず、良い結果とはなりません。ですから、私は患者さまに病状や治療法について説明し、患者さまと十分に話し合って治療方針を決定していくように心がけています。また、口腔外科ではコンピューターガイド手術(インプラント治療)など最新の治療方法が増えてきています。ただし、その治療法は最適なものなのか。治療効果は確認されているのかを見極めなければいけません。患者さまに多くの治療方針が提示できるよう、そしてより良い医療が提供できるよう、常日頃から自身の知識をアップデートするようにしています。

―――今後のビジョンをお聞かせください。

島﨑
 TMGで歯科口腔外科を標榜する病院を増やしていくことです。当院ではインプラント治療などの自由診療も扱っていますが、基本は保険診療の範囲内で利益を上げています。ニーズは必ずありますので、ノウハウは全て伝えることができます。また、当院が日本口腔外科学会認定研修施設に認定されてから今年で3年目を迎えます。これからは当院で研修した人材を輩出していきたいと考えています。

―――本日はありがとうございました。

TMGあさか医療センター
埼玉県朝霞市溝沼1340−1
TEL:0570-07-2055(代表)