No.9 TMG武蔵脳神経ネットワーク 奥村浩隆先生・福田直先生
脳神経・脳卒中治療における施設の垣根を越えた
臨床での連携強化でスケールメリットを活かす
新座志木中央総合病院
脳神経血管内治療科部長
脳卒中・血管内治療センター長
奥村 浩隆 先生
おくむら・ひろたか
2000年 京都府立医科大学附属病院 脳神経外科 臨床研修医
2001年 京都第一赤十字病院 脳神経外科 臨床研修医
2002年 京都第一赤十字病院 脳神経外科 医員
2003年 社会保険神戸中央病院 脳神経外科 医員
2005年 和歌山県立医科大学附属病院 脳神経外科 員外助教
2006年 和歌山労災病院 脳神経外科 医員
2008年 橋本市民病院 脳神経外科 医員
2010年 公立那賀病院 脳神経外科 医員
2011年 岸和田徳洲会病院 脳神経外科 医長
2013年 昭和大学医学部脳神経外科 助教
2021年 新座志木中央総合病院 脳神経血管内治療科 部長
佐々総合病院
脳神経外科・脳卒中センター長
福田 直 先生
ふくだ・あたる
2000年 昭和大学病院 脳神経外科 研修医
2001年 国立国際医療センター 脳神経外科 医員
2002年 都立府中病院 脳神経外科 医員
2004年 昭和大学 救急医学科 助手
2005年 昭和大学横浜市北部病院 脳神経外科 助手
2007年 塩田病院 脳神経外科 医員
2008年 塩田病院付属福島孝徳記念病院 脳神経外科 部長
2011年 船橋市立リハビリテーション病院 医局長
2013年 千葉徳洲会病院 脳神経外科 部長
2019年 佐々総合病院 脳神経外科・脳卒中センター長

―――TMG武蔵脳神経ネットワーク(TMN)を立ち上げた経緯をお聞かせください。
- 奥村
- 各施設の脳外科を横でつなげてスケールメリットを活かす構想は入職前から考えていました。福田先生とは2013年頃からの付き合いで同学年で何でも言い合える間柄。福田先生が先にTMGで活躍されていましたので、まずは2人で手を組み、賛同する仲間を集めようと考えました。スケールメリットを活かさなければもったいない!
- 福田
- TMNの構想は以前から飲み会の席などで熱く語り合っていました。ただ、実際に形にするにはグループの理解を得る必要があり、実績を残さないといけません。まずは互いが所属する佐々総合病院と新座志木中央総合病院とで脳神経・脳卒中治療における臨床での連携を強化し、結果をもとに他の施設・人に声掛けをしていく。もちろん、そこには理想があり、理想が共有されたうえで結果を紡いでいくことが重要です。
―――TMN発足によって具体的にどのようなメリットがありますか?
- 福田
- 医師の働き方改革や医師臨床研修制度が変更されるなか、医師個人が孤軍奮闘しても通用しない世の中になっていることがひとつ背景にあります。メンバーを集め、症例に対し互いの知見を共有・連携することで、より良い医療をより多くの患者さまに提供できるだけでなく、症例が集まることで学術研究の推進につながります。まずは、私たち2人が業務をしっかり行うこと。臨床での連携を強化し実績を残すことが、結果的に症例数につながります。
- 奥村
- TMNにて協力することで、治療成績を向上することができると考えております。難しい症例の治療のためには、自施設のスタッフの知見を集め、考え協力することが重要ですが、単独施設だけではなく、複数の施設の専門家の知見を持ち寄ることも重要です。同じ脳神経外科でも福田先生と私とでは得意分野も診療アプローチも異なります。それぞれの価値観や知識を集め認め合い、ディスカッションしてより良い治療法は何か導き出していくことで、成績を向上し困難症例に立ち向かうことができます。そのためには、TMN内でのコミュニケーションが最も重要だと思います。
―――新座志木中央総合病院と佐々総合病院との連携について教えてください。
- 奥村
- 私や新座志木中央総合病院のスタッフが佐々総合病院に行って外来や血管内治療を行い、反対に福田先生や佐々総合病院の先生方が当院に来て手術をしていただくなど、医師の人事交流を深めています。普段から福田先生と密に連絡を取り、困難な治療は必ず連絡しています。緊急症例の対応のため、夜中に福田先生と私がお互いの施設を行き来することもあります。
- 福田
- 日々奥村先生と話をしています。昨夜も当院でコイル塞栓術が行われた際、同術のスペシャリストである奥村先生に治療前30分相談しました。先日は一橋病院で血栓回収療法が必要な患者さまが現れたとき、当院では受けられませんでしたが、新座志木中央総合病院が受けてくれました。普段から密に連絡を取り、コミュニケーションをとっていれば患者さまの搬送も可能です。
―――課題はありますか?
- 奥村
- 課題はたくさんあります。まずは、各施設との連携を深めることです。現在は、より良い医療体制構築のため戸田中央総合病院の先生方と話し合っているところです。われわれが持っていない知識や技術を持つ先生が、TMGに多数います。そういった先生方の知見を集め、グループとして成長していきたいのです。次のステップとして、これら知見を研究成果としてアウトプットすることがあります。学会発表や論文作成はもとより動画やWEBコンテンツも活用したいと考えております。TMGだけでなく他の大学病院や民間病院と一緒に研究を検討している最中です。
- 福田
- 大きな問題はグループ内連携です。近い距離に位置する各施設が、互いの強みを活かし、パワー不足を補い合う役割分担が出来ればさらに地域に貢献できるのではないでしょうか
- 奥村
- 一番大事なのは現場の意識が変わること。
- 福田
- “互いの必要性を感じる”意識改革が必要です。それは結局のところ、“帰属意識”なんです。地域貢献の一翼を担っているという意識です。
- 奥村
- 人はそういった時、“慣性力”が働き「今のままでいい」と感じる傾向があります。それをどう打開し、新しいことを受け容れられるようにするか――、まずはやってみること。実例を重ねていくことです。
- 福田
- たとえば救急で入院が必要になった場合、「満床だから」「スタッフが足りないから」で断るのではなく、「全部受けます。ダメだったら〇〇病院に即搬送」としていきたいですし、この流れを当たり前にしていきたい。そうすることで、埼玉南部・東京多摩地区の医療圏およそ200万人をカバーすることができます。
- 奥村
- 前述のようにTMG内だけでなくグループの垣根を越え他の大学病院や民間病院と研究を行い、それを対外的にアピールできることを目指しています。世間に活動が広く認められると、TMNの認知度が高まるだけで無く、やる気のある若い医師も集まると期待しています。
- 福田
- 臨床も研究もしっかりやりたい研修医は多くいます。TMGでそれが可能となれば、意欲ある研修医の受け皿となる可能性もある。非常に発展性を感じます。
- 奥村
- また、活動が活発化し話題になると、職員の満足度も向上。プライドや誇りが芽生えますし、結束感も出てきます。
- 福田
- 同感です。職員たちのパフォーマンスが上がるのは所属する組織への誇りです。そのためには、実績を出す、外部にアピールし続けることが重要です。奥村先生は外部に対して非常に発信力がありますので、私はTMG内の基盤を固めるのが役割です。
―――今後のビジョンをお聞かせください。
- 奥村
- ネットワークをグループ内外でつなげ、他施設・企業との共同研究やタイアップ等を進めることがひとつ。また、脳卒中専門医、脳卒中の外科技術認定医、脳神経血管内治療専門医のキャリアアップを達成できる教育体制を整え、TMGで長く働く人材を育てたいと考えます。私も15年後には定年を迎えます。それまでに次世代のTMNを率いるリーダーを育成していくことが使命だと考えております。そうすれば、TMNは強固なグループとして発展し、TMGに長く貢献できると考えています
- 福田
- 私が医師としてスタートをきった2000年。当時、国は団塊世代が75歳以上を迎える「2025年問題」を掲げ、介護保険制度を創設するなど、医療や国民皆保険制度が破綻しないよう対策してきました。その2025年がまさに今年。そして次は団塊ジュニアが後期高齢者となる「2040年問題」です。これから15年、医療業界はさらに厳しさを増します。TMGは、埼玉南部、東京多摩地区、神奈川地域の急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで非常に重要な役割を担っています。その力、リソースを最大限活かすべきですし、今がそのターニングポイントだと考えます。皆さん、一緒にTMGを盛り上げていきましょう。奥村先生とは「2040年の65歳までは頑張ろう」と励まし合っています(笑)。
―――本日はありがとうございました。
TMN参加施設
戸田中央総合病院
TMGあさか医療センター
新座志木中央総合病院
佐々総合病院
西東京中央総合病院
一橋病院
戸塚共立第1病院
戸塚共立いずみ野病院
八王子山王病院
小平中央リハビリテーション病院
牧野リハビリテーション病院
戸田中央トータルケアクリニック
戸田中央病理診断科クリニック
戸田中央 総合健康管理センター