2021年10月8日に開催された日本音声言語医学会・学術総会にて、「YouTube動画を用いた音声治療の自主トレーニング」という表題にて発表させていただきました。
当院では様々な音声障害を抱える患者様に対し、外来での音声治療を行っておりますが、コロナ禍において外来リハビリを休止せざるを得ない時期があったことに加え、通院を控える患者様も少なくありませんでした。
また、これまでにも自宅での自主トレの実施を指導しても、継続して定期的に行うことが困難な患者様が多いことも課題となっていました。
そこで今回、自主トレの実施を補助する目的で、オリジナルの動画を作成しました。約4分の動画を6本用意してYouTubeにアップロードし、それぞれの実施方法を解説したプリントに、動画のQRコードを記載して患者様に渡しました。
対象を当院における音声治療と自主トレの併用群と、関連施設における自主トレのみの単独群に分け、自主トレ実施前後のアンケート結果、VHI、MPT、音響分析の比較検討を行いました。
アンケート結果は双方の群で概ね好評でしたが、併用群ではVHIやMPT、音響分析で改善を認めた一方で、単独群ではいずれの項目でも著明な改善は認められませんでした。
今回の結果からは、自主トレに動画を用いることは音声治療の補助手段として有効であることが示唆されましたが、併せてSTによる音声治療を行っていく必要であると考えられました。実際に、単独群の中には音声治療を希望され、当院への通院を開始した患者様もいらっしゃいました。
今後も、動画を用いてより効果的な自主トレが行える環境の構築に取り組み、音声治療の質の向上に努めていきたいと考えております。
文責:戸田中央総合病院 言語聴覚士 北井妙
2021年10月8日に開催された日本音声言語医学会・学術総会にて、「変声障害に対するリハビリテーション治療の臨床的検討」という表題にて発表させていただきました
変声障害は、一般的に思春期の「声変わり」が上手く完遂しない音声障害のことを言います。本来思春期には、喉ぼとけや声を出すための声帯が成長することにより、話し声が低くなりますが、変声障害はその性徴を遂げたにも関わらず、以前のような高い声で話したり、低い声の中に高い声が混じってしまう「二重声」や「裏声」を伴った機能性発声障害の事を言います。
当院の言語聴覚士は、入院の患者様のリハビリテーションだけでなく、耳鼻咽喉科の中村一博先生のご指示の下「音声外来リハビリテーション」を行っており、今回は変声障害にて音声治療が奏功した10~20代の5名を対象に発表させていただきました。
変声障害治療の目的として、「低い話声を獲得すること」に重きを置いておりますが、獲得した低い声を使うことに対する「心理的要因」や声に対する周囲の理解など「環境的要因」も大切になってきます。
今回は、その声質の改善(声の低音化)は勿論のこと、リハビリテーション期間の中で患者様の声に対するニーズの変わり方にスポットをあてた発表をさせていただきました。
結果、5名全員、低音を獲得し日常生活上で問題ないという満足度にも関わらず「リハビリテーションを継続したい」というニーズが強くあり、中でも歌声に対する悩みが残る方が多く見受けられました。
私自身、本発表を通して、言語聴覚士の変声障害治療は、低音を獲得するだけでなく、よりよく声帯をコントロール出来るところまで治療をすることの大切さを学ばせていただく大変貴重な機会となりました。
文責:戸田中央総合病院 リハビリテーション科 言語聴覚士 尾池 功
戸田中央総合病院 音声外来 https://www.chuobyoin.or.jp/department/voice/info/