2021年5月19~22日に開催された『第62回日本神経学会学術大会』にて、言語聴覚士の廣澤紀美子が「慢性期筋萎縮性側索硬化症患者における咬反射再出現の要因」と言う演題で発表させて頂きました。
本来は生後5~7か月で消失するはずの咬反射が前頭葉症状として再出現する現象は、脳血管障害後の症例などでは複数報告されています。今回、慢性期ALS患者においても口腔ケア時に咬反射が認められたため、前頭葉機能や下顎の可動性などとの関連性を調べました。
結果、年齢、性別、罹病期間、TIV期間などとの関連は見られず、意思伝達能力、BADS質問紙スコア、下顎の可動性と関連が見られました。
以上の結果より、ALS進行に伴う前頭葉機能の低下が咬反射の再出現に関係していると考えられます。また、咬反射の再出現は前頭葉機能の低下の徴候を知る手段としても活用できるのではないかと考えました。
慢性期ALS患者のようにコミュニケーションが取りづらくなってしまった症例であっても、咬反射の確認は容易に実施できます。日常の介入の中で患者様のこうした変化に気付き、早期にアプローチを開始できるような一助になれば良いと思います。
今回の研究を通し、維持期では進歩的な事が少ないのではと思われがちですが、患者様の機能は可能な限り維持に努め、セラピスト本人は常に知識欲を持ち、知識・技術の進歩に励まなければならないと改めて感じました。
狭山神経内科病院ホームページ:http://www.sayama-neuro.jp/
狭山神経内科病院リハビリテーション科 動画
文責 廣澤紀美子