第19回日本神経理学療法学会学術大会が12月18~19日にオンデマンド形式で開催され、両側前大脳動脈領域損傷に対する理学療法について発表させて頂く機会がございましたのでご報告致します。
本学術大会は脳神経内科学領域における研究発表が主体です。今回発表させて頂いた症例は、入院当初から運動機能や感情面の問題によりADLに全介助が必要であり、歩行が獲得可能か予測することがとても困難な症例でした。さらに長期臥床による廃用症候群も認めていました。そこで、早期から装具を用いた中での歩行練習がADL改善に繋がるといった先行研究や脳画像の予後予測に関する有用性といった知見を基に、早期から歩行練習を行い、退院時には歩行自立にまで至りました。
人間の脳内における、記憶や感情の制御というと前頭葉や側頭葉が、運動機能においては頭頂葉が良く知られている箇所と思います。その両者の栄養血管である前大脳動脈は前頭葉や頭頂葉など大脳の前部に血液を供給しており、運動機能や記憶に関わり、感情のコントロールなど「人間が人間らしく」在る為に重要とされています。
脳卒中や外傷等によりこの領域が損傷を受けてしまうと、考えたり記憶することが難しくなり、運動が出来なくなったりといった症状が見られるようになります。
全国規模での学会発表は初めての経験でしたが、発表資料の作成において困った際には経験豊富な先輩、上司と相談しやすい環境に大きく助けられました。結果的には発表を通して、専門性を活かした根拠ある理学療法を提供することが出来たのは、大変貴重な経験となりました。学会発表をするメリットとして、これまでに無かった視点を発見することが出来ること、患者さんに科学的根拠ある理学療法を着実に提供できるようになることだと体感致しました。日々精進したいと思います。
文責:戸田中央リハビリテーション病院 理学療法士 朝光瞬平